風土産業への思い
光があり、風が野山を吹きわたり、土のにおい、清らかな水、トンボやカエル、そして子供や知の笑い声、、、すべての生命を育む地球。そこには、田畑を耕し土からの恵みをいただく、木を育て山からの恵みをいただく、川や海から多くの恵みがある。それは、地球に生命が誕生してから、世代を越えて、あらゆる地域で繰り返されてきた地球の輪廻に根差した営みであり、人間だれしもが懐かしく思う風景である。そのような風景を人が懐かしいと思う心は同じであろうが、しかし同じ風景は一つもない。人々はその独特な風景や地域を愛し、その中で生活を営んできた。人々が生活を営むに十分な“エネルギー”を地球からいただき、そして自然・地球にお返ししてきた(地球の輪廻)。この“エネルギー”と人の営みが綜合されて、その地域特有の文化が生まれ、形成され、伝承されている。
今、感じる違和感
一方で、時の流れとともに、人間の価値観も少しづつ変化し、今の時代は、効率が一番。それを追求した結果、人間にとって便利なものを安く・大量に生産し、富を追求することが「正」とされるようになっているように見える。果たしてそれだけでよいのであろうか。物の持つ便利さという価値だけに注目していいのであろうか。便利なものを作り出すことに携わっていることに満足していいのであろうか。人間らしい豊かさの本質はそれらとは別のところにあるのではなかろうか。人間だれしもが懐かしく思う風景やその地域での営みや文化を温めなおしてみたいと感じている人も多いのではなかろうか。
しかし、外から眺めて懐かしさを感じるだけでは何も生まれてこない。自然の中、地域に自分の足で立ち、風を感じ、土のにおいをかぐことで、地球の持つ”エネルギー“や自然の”力“と自分が共に生きていることを、「自分ごと」として実感できる。そして、その実感が重なり合うことで、人々の間に共感が生まれ、その共感が人々のおかれている状況を変革していく力となる。そこでは、上下関係はなく、答えを持っている・知っている人が偉いわけでもなく、おかれた状況を一人一人が真剣に考え、語り合うことで、フラットな関係ができ、共感と共に共同体が構築される。
風土産業へ
農業、林業、漁業、工業、商業、それぞれにかかわる人々が、それぞれの役割を「効率」に向けて果たすのではなく、地球の“エネルギー”や自然の“力”とのかかわり、さらには、これまでの産業の歴史(繁栄だけでなく衰退や災害)・文化(お祭りや風習、気質)も含めて、より一層深く原理原則(機能)のつながりとして俯瞰的に理解し、わかったこととわからないことを明確にし、謙虚に受け止めることが大切である。わからないことの解明に挑戦し続け(実験・研究の役割)新たな理解を得ることで、新しい技術を獲得し、それをビジネスの核として再構築し社会に実装する。ここに、これまでの常識の殻を破った新たな価値を生み出せる可能性が秘められている。
美しい風景の裏に秘められている地球の輪廻の理(ことわり)を、自分ごと化して再発見し、そこで生活を営む人々と思いを重ね・刺激しあい、共に育つことで、単にエネルギーが足し合わされるだけでなく、人々の持つエネルギーがお互いに増幅されるような状況を生み出し(共育)、新しい価値を創造すること、それが風土産業であると考える。
